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モダンホライゾンの厄災

モダンホライゾンの厄災

スタンダードを経由せずモダンのプールへ直接カードを追加できるモダンホライゾンは、その特性をフルに活かしてモダンの様々なデッキへ強力な新戦力を供給し、環境を活性化させました。

しかしその一方、モダンホライゾンには、環境のバランスを崩すほど暴れまわるカードも数枚存在しました。彼らの行き過ぎた活躍は、一部のプレイヤーが愛するデッキを奪われるという悲劇の引き金になってしまいます。

今回は、そんなモダンホライゾンの“厄災”が引き起こした悲しき事件を3つ紹介します。私は直接の被害者ではありませんし、モダンホライゾンという取り組み自体が失敗だったとは全く思っていませんが、このセットがきっかけで絶望させられたプレイヤーが一定数いたという事実を紹介したいと考え、今回筆を執りました。軽めの読み物としてお楽しみいただければ幸いです。

はじめに:モダンプレイヤーは好きなデッキを長く使いたい

具体的なエピソードの前に、影響を受けたプレイヤーの悲しさをよりよく理解いただくため、モダンというフォーマットの特徴と、プレイヤーが環境に望むことをお話しします。

モダンは、妨害するカードより攻めるカードが強いことから環境のソリューションとなるデッキが存在しにくく、最も多様性に富んだフォーマットです。サイドボードが15枚で足りないとはよく言われており、大会では毎週異なるデッキが上位に登場します。

そのためモダンでは、トップメタを追いかけるのではなく、自分の好きなデッキ・好きなカードをずっと使い込むという戦略が成立します。多くのプレイヤーは、新セットで時々もらえる強化パーツを楽しみに、お気に入りのデッキを長く使い続けでいます。

そんなモダンで最も嫌がられるのは、いうまでもなく自身のお気に入りデッキが使えなくなることです。ソリューションが生まれて環境が一色に染まり、他のデッキを使う意味がなくなってしまったり、自分が使うデッキのコアパーツが禁止され、デッキが成立しなくなってしまったり。モダンを好むプレイヤーにとって、こうした事態はまさに悲劇といえます。

それでは上記を踏まえ、モダンホライゾンがモダンに持ち込んだ厄災を見ていきましょう。

厄災その1:墓地利用デッキ全員巻き込んだホガーク

最初に環境を荒らしたのは「甦る死滅都市、ホガーク/Hogaak, Arisen Necropolis」でした。

蘇る死滅都市、ホガーク

マナの代わりに戦場のクリーチャーや墓地のカードを使って唱えることのできるホガークは、同時に収録された「狂気の祭壇」や「屍肉喰らい」と共に、すでに一線級の墓地利用デッキであったブリッジヴァインへ、わずかなマナから大量に戦力を展開する手段を供給しました。そのスピードは、2ターン目に複数枚の復讐蔦とホガークが着地することも珍しくなかったほど。

ホガークの悪名はすぐに環境中へ響き渡りました。あまりにもインチキな動きを批判する声は大きく、ウィザーズは早期に黄泉からの橋を禁止します。

デッキの核であるホガークをいきなり禁止することは避け、サポートカードの禁止によってデッキパワーを適正範囲に収める算段でした。黄泉からの橋自体、墓地にいるだけで無からリソースを産むという悪用しやすいカードですし、当時ブリッジヴァイン以外での採用率は低かったため、最初の禁止カードとしては理解できる選択だったといえるでしょう。

しかし、黄泉からの橋を失った後もホガークの勢いは全く衰えず、更に勢力を拡大していきます。最も顕著だったMythic Championship IV in Barcelonaでは上位20名のうち11名がホガークデッキという状態でした。

そして悲劇が訪れます。多くのデッキでメインから墓地対策カードが採用されるほどの事態を重く見たウィザーズは、墓地利用デッキを弱体化させるため、ホガークと同時に信仰無き物あさりまで禁止したのです。

信仰無き物あさり

信仰無き物あさりは、軽量ながら1枚で多くの役割をこなせるカードで、多くのデッキに潤滑油として採用されていました。中でもイゼットフェニックスやホロウワンは、この変更によって深刻なダメージを受け、勝率を維持することが難しくなってしまいます。

ここまでで、モダンホライゾン発売からわずか2か月半。あっという間の出来事でした。

ウィザーズは、ホガークを抜きにしても墓地利用デッキが勝ちすぎており、禁止という手段を使ってでも全体的に弱体化させる必要があると考えたようです。ホガーク禁止後も解禁される様子がないことを見ると、信仰無き物あさりも黄泉からの橋も、いずれは禁止される運命にあったのかもしれません。

しかし、ホガークがすべての引き金を引いたことは誰の目から見ても明らかでした。被害を受けた当事者からすれば、バランス調整に失敗したぶっ壊れカードのとばっちりを食らったという思いしかないでしょう。

こうして、第1の厄災「ホガーク」は、多数のデッキを巻き添えにしながらその短い生涯を終えたのでした。

厄災その2:親和を身代わりに生き延びたウルザ

ホガークの悲劇から数か月。エルドレインの王権発売を契機に、第二の厄災「最高工匠卿、ウルザ/Urza, Lord High Artificer」が暴れ始めます。

最高工匠卿、ウルザ

アーティファクト生成能力、アーティファクトからマナを産む能力、フィニッシュ手段と一貫した3つの能力を1枚に搭載したウルザは、発売当初からアーティファクトデッキのフィニッシャーを務めていましたが、「王冠泥棒、オーコ」や「湖に潜む者、エムリー」という相性抜群のカードを獲得したことで、凶悪なデッキ「ウルザフード」を完成させてしまいます。

単独でも強力なカードを詰め込まれたうえに、その全てが完璧に噛み合ったウルザフードは、安定的なゲームプラン遂行能力と高い妨害性能を兼ね備えており、「環境に存在するデッキの9割に有利」といわれるほどの支配的な地位を築きました。

この状況を是正する手段としてウィザーズが選択したのは、オーコとオパールのモックスの禁止でした。それによってウルザデッキのパワーは適正化され、ウルザ本人は禁止を免れたことから、ウィザーズの目論見は成功したといえるでしょう。

オパールのモックス

しかし、親和をはじめとするアーティファクトデッキにとって、この改定は致命傷でした。序盤の展開を支えるキーカードを失ったことで、多くのデッキは環境から姿を消してしまいます。

電結の荒廃者

元々オパールのモックスは、パワーの高さ故にモダンホライゾン以前から規制を求める声が根強いカードでした。条件によってはパワー9を超える0マナのアーティファクトと4マナのクリーチャー、どちらを禁止すべきかといわれれば前者であることも間違いないでしょう。

しかし、アーティファクトを並べる戦略とこれほどまでに相性の良いフィニッシャーがいなければ、支配的とまでは言えなかったアーティファクトデッキの起爆剤にとどまっていたオパールのモックスが、このタイミングで禁止されることはあったでしょうか。

自身と全く関係ない理由で突然デッキを剥奪されたうえ、きっかけを作った張本人は環境に残っている。こんな状況を前に、親和プレイヤーが大きな悲しみを抱いたであろうことは想像に難くありません。

こうして第2の厄災「ウルザ」は、自らの延命と引き換えに、モダン制定当初から存在する伝統のデッキにとどめを刺したのでした。

厄災その3:色の概念を破壊した天測儀

他のデッキを巻き込んではいないため、迷惑加減でいうと先に紹介した2例ほどではありませんが、「アーカムの天測儀/Arcum’s Astrolabe」もモダンプレイヤーを辟易させた問題児です。

アーカムの天測儀

1マナキャントリップのため、展開を全く阻害せずに使える万能マナフィルター。なおかつアーティファクトとして戦場に残るため、着地後も様々な方法で悪用が可能です。コントロールデッキのマナベースは一時期、このカードのせいで完全にタガが外れてしまっていました。

末期には、こんなデッキまで登場する事態に。

指定コストたっぷり、色盛り盛りの無茶苦茶なマナベースを実現しながら、基本土地も多いために特殊地形対策すら効きにくいデッキ。これが成立するようでは、マジックの基本である色の概念は崩壊してしまいます。カードの強さやデッキの勝率とは別の観点で、印刷されるべきではなかったカードといえるでしょう。

結局、発売から1年ほどたって無事禁止される運びとなりました

おわりに:モダンホライゾン2がやってくる

モダンのためにデザインされた専用セットでありながら、当のモダンでこれだけの悲劇を起こしてしまったことは、批判の対象となっても仕方ないかもしれません。

ただし、最初にも書いた通り、私はモダンホライゾン自体が失敗だったとは思いませんし、むしろこのセットはスタンダードのセットにはできない方法で環境を活性化させたと思っています。来年に予定されているモダンホライゾン2も大変楽しみにしています。

過去のカードが積み重なるとともに、環境へのインパクトとバランス維持の両立は間違いなく年々難しくなっているはずですが、今後もウィザーズの取り組みに期待したいところです。

あなたは、モダンホライゾンにどんな思い出がありますか。コメント欄やtwitterで教えてください。