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思考こそ成長:『アオアシ』21巻感想

※アオアシ21巻のネタバレが入っています。未読の方はご注意ください。

思考こそ成長である

スポコン漫画の「成長」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるでしょうか。

圧倒的なパワーやスピード?誰も真似できないテクニック?逆境にも負けない精神力?仲間との絆?とっておきの必殺技?

この『アオアシ』という漫画では、「考えること」が成長です。選手がそれぞれの場面で何を考え、どういう気持ちになったか。どんなきっかけで考えがどのように変わったか。

モノローグや表情の変化を効果的に使い、その過程を丁寧に描いています。だからこそ、派手な演出がなくとも読者は選手を理解し、その成長を実感できるのだと思います。

阿久津から学ぶアシト

船橋戦のショッキングな敗北から2か月。アシトは新体制になった後、試合に使われないながらもサッカーの勉強を続けていました。毎日阿久津に教えを請い、熱心に試合を観察します。

同級生達は、1年生ながら立派にチームの戦力となっていたアシトが試合に出られないことに納得していませんが、アシト自身は船橋戦の後、自分を高めるために必要なことを理解していました。今はまだ試合に出るべきではないことも。

そしてある夜、サッカー談義中に受けた阿久津の助言をきっかけに、アシトはサッカー観を一段階進化させることになります。

アシトがエスペリオンに入って以来憎まれ口を叩き続けた阿久津ですが、この日の言葉はこれまでと意味が違うように感じました。

まずは、センターバックである自分や3年の志村が攻めあがっても、残ったアシトが自陣の守りを担当できることを要求してきたこと。

阿久津は、自陣の面子を確認し、自分が攻め上がっても大丈夫だと100%確信したときにだけ上がるとも言いました。アシトが信頼に足るディフェンダーになりうることを認めたが故の発言です。

さらに、これまでは自分の指示に応えることができる駒として扱ってきたアシトに対し、「俯瞰の目で攻守の切り替わりを見極めろ。誰よりも早く動き出せ。」と要求します。そしてそれを「お前以外誰がやるんだ?」と。

船橋戦でのパフォーマンスを見て、自分にはない能力を持つアシトへの可能性を感じ取ったのでしょう。阿久津はアシト以上に、アシトの能力を活かす道が見えているようです。

次のページで阿久津が見せた笑顔からは、将来的に、阿久津とアシトが互いに認め合うベストパートナーになれる可能性が見えた気がします。

後輩を導く阿久津の深い視座と、アシトへの信頼感を感じられる名シーンでした。

チームのピンチとアシトの復帰

調子を崩して連敗したエスペリオン。選手たちは、負けたことよりも、その原因がわからないこと、自分の言葉で説明できないことに危機感を抱いています(ここにも漫画のスタンスがよく表れていますね)。

その原因に気づいたアシトは、自ら阿久津に告げます。「俺は2か月間、阿久津さんをずっと見てきたからわかる!」と。その姿をみて、福田監督はアシトをスタメンに復帰させることに決めました。

次はいよいよ今シーズンの最終戦、首位青森星蘭との大一番です。

ライバル登場

寮の部屋で青森星蘭の1年生、北野の映像を見たアシトは、何かを感じ取った様子*。以前から匂わせていましたが、北野はアシトと同じく俯瞰視能力を持つ選手のようです。

高校サッカー出身の1年生ながら、U-18の代表に選ばれ、すでにプロチームとも契約を済ませた北野。達成度でいうと栗林クラスの化け物なのではないか。

これまで、格上の先輩や上級生に揉まれながら特異な能力を磨いてきたアシトにとって、初めての明確なライバルといえる存在かもしれません。青森星蘭戦で激突する二人は、どのような化学反応を起こすのでしょうか。

*余談ですが、18巻では北野がアシトの映像を見て「コイツ俯瞰持ってる」と気づくシーンがありました。アツいですね!

キャラの思惑が交差する

以上が21巻の本筋ですが、それ以外にも見どころはたくさんあります。アオアシでは、多彩なキャラクターに「思考」や「考え方」で個性がつけられているので、いろいろなところでキャラの思惑が交差し、ドラマが生まれています。

阿久津の過酷な幼少期が明かされたことで、自分の力だけを信じて運命を切り拓こうとする彼の性格がよく理解できました。ある出来事をきっかけに調子を落としている阿久津ですが、闘争心は残っている様子。その壁を乗り越えることはできるでしょうか。

キャプテンである阿久津をサポートする同級生たちは、阿久津の長所も短所も必死さも理解したうえで、彼の足りないところ―下級生に手を差し伸べる役目を果たします。長年同じチームでプレイしてきた団結力を感じられます。

1年生の大友は、連敗で一気に雰囲気が悪くなったチームをみても「今までと違い、先輩が後輩に対等に接してくれている。チームが一つになるチャンス。」と持ち前のキャプテンシーで前向きに解釈します。大友はピッチの内外でチームの調和を保ち、精神的な支柱になれる選手だと思いました。

福田監督は、調子を落としている阿久津を使い続けることを決意しました。問題がセンシティブなだけに、阿久津が壊れてしまうリスクを負いながらも、彼が壁を乗り越えることに賭けました。これは、福田監督が突出した才能を世界に送りだすことを自らの使命と考えているからだと思います。果たして、この覚悟は吉と出るか凶と出るか…

次巻はまだか…

1冊にこれだけ密度の濃い話をねじ込んでくるなんて、一人で週刊連載しているとはとても信じられません。まるで、勝手にキャラクターが動き、作者はそれを描写しているだけのよう。一人一人のバックボーンや性格、思考の癖を相当練りこんでいるのでしょうね。22巻が楽しみで仕方ないです。

…こんなにサッカー漫画のことばかり話していたら、サッカー好きだと勘違いされてしまうかな。私は野球派です。どちらかというとサッカーは嫌いな方。ただ、このサッカー漫画は、今まで読んだどの野球漫画より面白いです。

関心持った方はぜひ手に取ってみてください!